トイレの便器に溜まっている水の量が減っていることに気づくと、多くの人は「どこか詰まったのか」「故障したのかもしれない」と不安に駆られます。もちろん、排水路の詰まりやタンクの不具合が原因であることも多いのですが、実は故障とは全く関係のない、ごく自然な現象によって水位が下がっているケースも少なくありません。慌ててラバーカップを使ったり業者を呼んだりする前に、まずは状況を冷静に観察し、意外な原因の可能性を探ってみましょう。 その代表的な原因の一つが、水の「蒸発」です。特に、旅行や帰省などで長期間家を留守にした後、トイレの水位が下がっているのは、この蒸発が原因であることがほとんどです。トイレの封水は常に空気に触れているため、時間が経てば自然と蒸発して量が減っていきます。これは物理的に当たり前の現象であり、全く心配する必要はありません。一度水を流せば、タンクから新しい水が供給されて正常な水位に戻ります。 もう一つ、意外と知られていないのが、強風や大雨といった天候が原因で起こる「誘導サイホン現象」です。台風の日などに、便器の奥からゴボゴボという音が聞こえたり、水位が下がったりすることがあります。これは、屋外の排水管内の気圧が急激に変動し、その力で便器内の封水が下水管の方へ引っ張られてしまうために起こります。これもまた一時的な現象であり、天候が回復すれば自然と収まることがほとんどです。 このように、トイレの水位低下は必ずしも故障のサインとは限りません。まずは「長期間家を空けていなかったか」「外は悪天候ではないか」といった点をチェックしてみてください。それに当てはまらず、水位の低下が頻繁に起こる、水の流れが悪いといった症状が伴う場合は、詰まりなどのトラブルが考えられますので、専門家への相談を検討しましょう。
故障ではないトイレの水位低下とその原因